預貯金の解約・名義変更と仮払い制度
口座が凍結される理由、解約に必要な書類、遺産分割前に引き出せる仮払い制度(同一金融機関150万円まで)を計算例つきで説明します。
この記事で分かること
- 口座が凍結される理由と、解約・名義変更に必要な書類
- 遺産分割の前でも引き出せる「仮払い制度」の計算方法と上限
- 法定相続情報一覧図を使うと楽になる点
口座が凍結されるとどうなる?
金融機関が口座の持ち主の死亡を知ると、その口座は凍結され、引き出しや振込ができなくなります。これは、相続人の誰かが勝手に引き出して、他の相続人とトラブルになることを防ぐためです。公共料金や家賃などの自動引き落としも止まるので、支払い先の変更が必要です。
解約・名義変更に必要な書類(一般例)
| 場面 | 主な書類 |
|---|---|
| 遺言書がある | 遺言書(自筆証書は検認済証明書。法務局保管・公正証書は不要)、故人の死亡のわかる戸籍、相続人(受取人)の戸籍・印鑑証明書 |
| 遺産分割協議がまとまった | 遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明書、故人の出生から死亡までの戸籍(または法定相続情報一覧図の写し) |
| 共通 | 通帳・キャッシュカード、金融機関所定の相続届、手続きをする人の本人確認書類 |
金融機関ごとに書式や必要書類が違います。まず電話や窓口で、「相続の手続きをしたい」と伝えて、必要書類を確認しましょう。法定相続情報一覧図があれば、戸籍の束を何度も出さずに済みます。
仮払い制度(遺産分割の前に引き出す)
2019年7月1日から、遺産分割が終わる前でも、相続人が単独で預貯金の一部を引き出せるようになりました。葬儀費用や当面の生活費に使えます(民法、法務省)。
- 計算式:相続開始時の預貯金額(口座ごと)× 3分の1 × 引き出す人の法定相続分
- 上限:同じ金融機関からは、合計150万円まで(法務省令)。同じ銀行の支店が違っても合算します。
計算例
前提:相続人は配偶者と子2人(法定相続分は配偶者2分の1、子各4分の1)。
| 預金の状況 | 人 | 計算 | 引き出せる額 |
|---|---|---|---|
| A銀行に600万円 | 配偶者 | 600万円×1/3×1/2 | 100万円 |
| A銀行に600万円 | 子(1人) | 600万円×1/3×1/4 | 50万円 |
| B銀行に3,000万円 | 配偶者 | 3,000万円×1/3×1/2=500万円 | 上限の150万円 |
検算:A銀行の配偶者は、600÷3=200、200×1/2=100で100万円。B銀行は500万円と計算されますが、上限150万円で打ち切られます。
上限をこえる額が必要なときは、家庭裁判所に「預貯金債権の仮分割の仮処分」を申し立てる方法があります。弁護士へ確認してください。
引き出す前の注意
- 引き出した金額は、あとで遺産分割で精算します。使い道の記録(領収書)を残しましょう。
- 払戻しを受けると、相続を認めたことになり、相続放棄ができなくなるおそれがあります。放棄を考えているなら、先に 相続放棄と限定承認 を読んでください。
- 相続税の申告では、死亡日の残高が必要です。残高証明書を各金融機関に請求しておきましょう。
ゆうちょ銀行・証券会社の口座は?
ゆうちょ銀行や証券会社の口座も、死亡を伝えると手続きが始まります。必要な書類や書式は会社ごとに違います。証券口座は、株式などを相続人の口座へ移す方法と、売って現金で受け取る方法があります。相続税の評価額は死亡日で決まるので、どちらを選ぶ場合も、死亡日の残高の資料を取っておきます。
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